獏良はいわゆる鍵っ子だった。
父親は仕事で忙しく海外を飛び回っている。母親は不在の父に代わり、取引先である古美術店や骨董収集家の間を行き来し、帰りが遅くなることも多い。
学校から帰っても自宅には誰もいない。
帰宅する度に通学鞄に紐で括りつけてある鍵を引っ張り出して解錠する。
暗い家の中に入り、自分の手でぱちぱちと電気を点けていく。
腹が空いていれば、キッチンの戸棚から菓子を取り出すこともあるし、ホットケーキを焼いて食べることもある。
幼い身でありながら、簡単な調理と片付けなどの基本的な家事は教え込まれていた。
夕食は母親が冷蔵庫に保存しておいたおかずをレンジで温める。
米を炊けばすぐに食べられるようになっている。
学校から帰ってきたら、冷蔵庫の中を確認する習慣が身についていた。
冷蔵庫にない場合は、数枚のお札がテーブルの上に置かれている。
今日はカレーが作ってあったので買いに行かずに済んだ。
一人で夕食を食べ、風呂に入り、ベッドに潜り込む。
すっかり慣れた生活だが、時折表現できない感情に襲われて涙が溢れてくる。
しとしとと枕を濡らし、冷たいベッドの中で縮こまる。
以前はこうはならなかった。
両親がいなくても一人きりではなかったからだ。
妹と手を繋いでいれば泣くことなんかなかった。
しかし、今は手を繋ぐ相手がいない。
勝手に流れ出る涙を拭いもせずに、獏良は暗闇を見ていた。
朝が来ればこんな気持ちは吹き飛ぶはずだ。太陽が明るく照らしてくれるから。
暗い中で一人でいるから不安になるのだ。こんなものは一時の感情でしかない。
早く朝になればいいのにと願わずにはいられなかった。
眠ってしまえば、すぐに朝になるはずだ。早く眠りに就きたい。
そして、獏良にはもう一つの期待があった。
こんな夜は「彼」が呼んでくれるかもしれない。
獏良が期待を胸に抱きながら目を瞑ると、身体を奇妙な浮遊感が包み込み、ベッドの中へ沈んでいくような感覚がした。
身体を支えているものがなくなり、地の底までも落ちていく。意識が覚醒から睡眠に移行する挟間。
――会える……。
うたかたの夢
獏良が下り立ったのは、自室とはまるで異なる広い空間だった。
光に乏しく周囲を見渡すことはできないが、獏良はこの場所をよく知っている。
窓もドアもない、くすんだ色の石材が敷き詰められた正方形の殺風景な部屋だ。
ドアがない部屋に入るのは不可能。部屋として機能していないただの空間だ。
どうしてそんな部屋に入れるのか、獏良は疑問を持っていなかった。「そういうもの」だと理解している。
大人なら受け入れ難い現象も、常識に縛られていない子どもなら易々と認めてしまう。
夜になると「彼」がこの場所へ呼ぶのだと、「彼」は夢の中だけで会える友人だと、獏良なりに解釈をしていた。
眠りに就く前と同じパジャマ姿のまま、裸足でぺたぺたと前へ歩き始めた。
石でできているはずの床は不思議と冷たくない。
先には指の輪ほどの小さなオレンジ色の灯りが見えていた。
脇目も振らずに灯りを目指す。
やがて、一人の男が灯りに照らし出された。
光源は床に置かれたランプ。その横で胡座を掻いて、獏良の方をじっと見ている。
年格好は十代後半。長い髪が肩から垂れていた。
「彼」の鋭い眼差しも、不機嫌に曲げられた口も、獏良は見慣れている。
すぐ側まで近寄り、「こんばんは」と話しかけた。
「こんばんは」
少しだけ男が微笑んだ。
些細な変化でも、これが男の不器用な感情表現だと獏良は知っている。
男は数ヶ月前から獏良の夢の中に現れ始めた。ちょうどエジプトから帰ってきた頃になるのでよく覚えている。
顔も声もどこかで見たことがあると、獏良はずっと思い出しそうとはしているが、今に至るまで叶っていない。
「また、泣いてたのか?」
涙は既に止まっている。
獏良の腫れた目をすぐに認めて、男は指摘した。
「うん……」
遠慮がちに獏良は頷いた。
獏良の頭に「男はすぐに泣くものではない」という父親の言葉が甦る。
手を後ろに組んで足をもじもじと動かした。
泣いていることがバレれば、親には呆れられ、クラスメイトには笑われる。
萎縮する獏良を咎めることはなく、男は両腕を前に伸ばした。
その仕草に獏良は安堵の表情を浮かべると、腕の中に思いきり飛び込んだ。
小さな身体を受け止め、男の大きな手が獏良の頭を優しく撫でる。
獏良の身体がすっぽりと収まってしまうほど、二人の体格差は大きい。
温もりに包まれて獏良の緊張の糸が解れていった。
男はいつも優しい。
兄であった獏良にとって、年上の頼れる存在は憧れだった。
男はまさに獏良が理想としている存在だった。
会えば朝までとことん遊んでくれる。
何をしても怒ることはない。
獏良の話すべてに頷く。
男は今や獏良が一番心を許している存在にまでなった。
サンタクロースがいないことはとっくに知っているが、夢の中で会える男については無条件に受け入れている。
心の底では父に代わる存在として認めているのかもしれない。
「可哀想になァ」
男は腕の中にいる獏良の顎を持ち上げた。
獏良が疑問に思う間もなく唇が塞がれる。
さすがに驚いて身を固くし、混乱する頭で唇を重ねられた理由を必死に探した。
キスは親愛の証。
小さい頃は親とだってしていた。
唇は初めてでも、場所が違うだけで同じ。
恋人がするキスの知識はあるけれども、男同士だから関係ない。
男はきっと慰めてくれているのだ。そうに違いない。
獏良は思考の末に男のキスを受け入れた。
「今日は何をして遊ぶの?」
唇が離れると、照れ臭く思っているのを悟られないように、気にしてませんよと澄ました顔を作った。
今までオセロやすごろくなど、様々な種類のゲームをしてきた。一つだって同じものはない。
初めて知るゲームがたくさんあった。
だから、男の提案するゲームは獏良の楽しみだった。
次はどんなゲームを教えてくれるのだろうか。
好奇心に目を輝かせて男を見つめる。
「そうだなァ……。まだ元気のないお前のために新しいゲームをするか」
男はちょんと獏良の鼻をつつき、にっと笑って見せた。
「分かるの?」
「お前のことならなんだって分かるさ」
確かに獏良は少し虚勢を張っていた。いつまでも甘えているのが申し訳なかったからだ。
僅かな心の機微も見抜かれてしまった。
両親が仕事で出かけるときに玄関で精一杯物分かりのいい息子のふりをして手を振るのも、男は見破ってしまうのではないだろうか。
親すら気づかないような微かな表情の翳りも。
「寂しい気分なんて吹っ飛ばしてやるからな」
男は抱きかかえた獏良を床にころんと寝かせた。
「じっとしてろよ」
仰向けの体勢でこれから何が始まるのかと、獏良は目を丸くしていた。
男はパジャマの裾を胸の辺りまで捲った。
獏良の白い腹と胸の下部が剥き出しになる。
その上には子どもが身につけるには仰々しい金色のペンダントが乗っていた。
「あー……」
男の眉間に皺が寄った。
「もう、塞がってるな」
残念そうに息を吐き、獏良の鳩尾近くを指先で撫でた。
肌の上で小さく円が描かれる。
熱心に何度も肌を往復する。
「……ふっ、くすぐった……」
ぷるぷると獏良の身体が小刻みに震える。
男はペンダントについた五本の針を一本ずつ指で弾くと手を離した。
「よく動かずにいられたな」
「くすぐりっこ?」
獏良は少し不満に思った。
幼児がするような遊びはとっくの昔に卒業している。
もっと難しいゲームだってできるのだ。
簡単なゲームでは物足りない。どうせなら、もっと頭を使うゲームが良い。
「ご不満かい」
「簡単すぎるよ」
優しくされるのは、とても嬉しい。
しかし、過度に子ども扱いされたくない。
子供らしいワガママだ。
獏良は口を尖らせて主張した。
「これからだからな。派手に動いたらお前の負けだ」
男は右手の中のものを獏良に突きつけた。
「なにそれ?」
親指よりも一回り大きい卵型の物体だった。見たところプラスチック製でピンク色にテカテカと光っている。
先端からは一本の線が伸び、左手の中に繋がっている。
左手にあるのは同じ色をした長方体の物体だ。
それを握る男の指が動き、カチッと音がしたかと思うと、卵型がブルブルと微振動を始めた。
卵型の正体は分からないままだが、男の左手にあるものはスイッチらしいと獏良は推測した。
男は獏良の頬に震える卵型を当てた。
人の手で与えるよりも細かな振動が伝わる。
「わっ」
驚きの声を上げても、獏良はほとんど動かなかった。
動いてはいけないというルールをしっかりと守るために。
「ハハハッ、偉いな」
男は楽しげに笑うだけで、問いかけに対する答えを口にしなかった。
しかし、獏良には心当たりがあった。
マッサージ器だ。
大人はどういうわけか肩凝りになるらしい。
両親がよく使っているのを獏良は見たことがあった。
獏良も真似をして肩や首に当ててみたことがある。
くすぐったいだけで両親の言う、「気持ちいい」とか「効く」といった言葉の意味は分からなかった。
サイズはまるで違うが、動きといい、感触といい、ほぼ同じだ。
「これは?」
今度はすぐ下の首筋に刺激を与えられる。
「うっく……」
獏良は足を小さく擦り合わせて感触に耐える。
「セーフ」
どうやら、少し動いたくらいではゲームオーバーにはならないらしい。
卵型の刺激はむず痒いなどという生易しいものではなかった。
本当なら床を転げ回って大笑いしていたところだ。
「どこまで耐えられるかな」
男は獏良の身体のあちらこちらに卵型を押し当て始めた。
「ひゃっ……うう……あはははっ」
部位が変わる度に獏良の反応も変わる。
逃げ腰になったかと思えば、大口を開けて笑い出して忙しい。
男は獏良の反応を楽しんでいるようだった。
いつの間にか、空いている手で横になった身体を抱えていた。
パジャマの上着をさらに捲り、胴体のほぼすべてが露出する。
獏良にはそれを気にしている余裕はなかった。
仰け反って「くすぐり攻撃」に耐えている。
「ンッ」
胸の頂きに差しかかると、獏良は今までにない反応を見せた。
ぎゅっと目を瞑り、手を固く握っている。
「ん?くすぐったいか?それとも、気持ちいいか?」
「分かんない。へっ、変な感じ……」
「ふーん」
これまでになく強く卵型が押しつられた。
胸の先端が柔らかい皮膚の中に沈む。
「んん」
この感触をなんと形容すればいいのか獏良は知らない。
むず痒い中にも痺れるような感覚があった。
「ずるいよう……」
未発達な性感ではそこまで。
反対の突起に触れられても同じだった。
「まあ、こんなもんか」
男は素っ気なく言い捨てた。
ぐったりと頭を垂れる獏良の耳にその言葉が届く。
マッサージ器で気持ち良くなるのは、きっと大人だけなのだ。
だから、この年上の男は「気持ちいいか」と聞いたのだ。
もう少し大きくなれば、気持ち良くなるのかもしれない。
何かに手が届きそうで届かない感覚はあった。
「こっちはどうだ?」
「あっ!ああ……」
卵型を掴んだ男の手がズボンの中へ入り込み、産毛すら生えていない下腹部の先にある膨らみに触れていた。
「やっ!そこは触っちゃダメ!」
血相を変えて男の手を引き剥がそうと身を起こそうとするも、
「動くなっつたろ」
新たに加えられた刺激にそれどころではなくなった。
そうしているうちに、ズボンの奥へと男の手が進む。
「あっ、ああっ」
膨らみの先端に辿り着くと、涙目で獏良が訴えた。
「ひっ……ヒリヒリするっ」
それでも手は止まらないどころか、ズボンが引き下ろされた。
ヒリつく箇所に冷たいものが垂らされた。
「くうっ、ん」
鈍い痛みは消え、緩やかな刺激に切り替わる。
「どうだ?もう痛くはないだろ?」
「よく……わかん……なっい」
「そればっかだな。まあ、仕方ねえか」
止まらない愛撫に獏良の大事な部分が麻痺してしまったようだった。
振動音の他にねちゃねちゃという音が聞こえる。
先ほどの冷たい感触の正体だろうか。
為すがままになっていた獏良が急に目を見開き、跳ね起きて男の手首を掴んだ。
「止めて!だめっ」
力を入れて腕を引くも力で敵うはずがない。
「どうした?」
口では問いかけるものの、男の手は止まらない。
「お願いっ。ヤダ……だめ……」
獏良は顔を真っ赤にし、首をぶんぶんと勢いよく横に振った。
胸の上のペンダントがカチャカチャと金属音を鳴らした。
懇願と拒絶の言葉のみが口から発せられた。
「あ……あっ……ああ……」
僅かに起き上がった先端から、ちょろりと液体が溢れ、
「ふう……」
堰を切ったように小さな放物線を描いて勢い良く流れ出す。
「ひ……ん」
震える内股に川を作り、太股で絡まっているズボンを汚す。
受け止めきれなかった液体が床に広がっていった。
それまで必死に耐えていたはずなのに、途中からは自分の意思で搾り出していた。
恍惚の表情さえ浮かべている。
ちょろちょろと水流が弱まり、やがてすべてを排出し終えた。
濡れた下半身を放り出したまま、獏良は手で顔を覆ってぐすぐすと嗚咽を漏らす。
男は濡れた手を呆然と見ていた。
獏良の身体を抱えていた左手は無事だが、刺激していた右手は避けようもなかった。
自分のせいではないのに、獏良は罪悪感に苛まれていた。
この年でお漏らしなんて恥ずかしい。
お漏らしは赤ちゃんがするものだ。
パパにもママにも怒られる。
「ごめん……ごめんなさい……見ないで」
顔を覆ったまま譫言のように謝罪を繰り返した。
「謝らなくていい。オレが悪かった」
獏良がそっと指の隙間から男の様子を窺うと、無事だった手が伸びて頭を撫でられた。
こういうとき、獏良が思う大人たちは有無を言わさず怒るはずだった。
両親や教師、周りの大人たちは理不尽な怒りをぶつけてくることもある。
子どもには分からないが、大人でも頭に血が上ることはあるのだ。
八つ当たりのように怒鳴ってしまうこともある。
心配によるものだったとしても、子どもには恐怖でしかない。
目の前の男は怒鳴りもせず、口元に笑みを浮かべているだけだ。
獏良は手を下ろし、自分を抱きかかえている男を見つめた。
不意にゾッと言い知れぬ悪寒が獏良の背筋を走った。
はあはあと微かに息が男の口から漏れ、真っ赤な舌が歯の隙間から覗いている。
注意深く見れば、頬がほんのりと上気していた。
目の奥には餓えた獣のような鋭い光が灯っている。
本人が口にした通り、怒ってはいないのだろう。
怒ってはいないが、獏良が到底理解できない感情を抱いている。
獏良が反応できないでいると、
「なあ、濡れて気持ちが悪いだろう?全部脱ごうな」
男の手がズボンを掴み、あれよあれよという間に一糸纏わぬ姿にされてしまった。
男も上着を脱いで半裸になり、獏良の濡れた身体を自身の服で丁寧に拭き取り始めた。
服が汚れることなど、一切気にしていないようだ。
とても親切な行動に見えるが、男から漂う異様な熱気に獏良は尻込みをしていた。
拒絶することもできずに、身体を預けたままだ。
男の視線が太股に絡みついたまま離れない。
いくら言葉や行動で優しく獏良を気遣っても目が物語っている。
獏良が目にしているものは、抑えきれずに漏れ出した欲情の断片だった。
男は初めて見る獏良の無防備な姿に欲情していた。
羞恥心に染まった顔も、我慢の末に心ならずも得てしまった放尿の快感に流される姿も、失態を犯したことにより生まれた罪の意識から流れる涙も。
人間の無防備な姿には、なんと背徳的な魅了があるのだろう。
右手を汚されたことも、まるで気にならなかった。
むしろ、嫌がる獏良から流れ出たものを受け止めることで支配欲が満たされた。
必死に隠している秘密を己の手で暴いたような、思いがけない幸運を手にしたような気さえする。
こんな姿を見せたのは、男が初めてだろうから。沸き立つ興奮が抑えられない。
獏良が泣く必要はないと思った。
二人は素晴らしい秘密を共有したのだから。
男の中に愛おしいという感情が生まれた。
もっと目の前の少年を愛してやりたい。
そんな衝動に駆られていた。
「泣かなくていい。誰もお前を咎めやしない」
濡れた下半身はすっかり綺麗に拭き取られ、獏良は赤く腫らした目で男を見上げている。
泣きじゃくった後の表情はいつもより幼い。
「だが、負けは負けだ。罰ゲームを受けてもらうぜ」
男の手が獏良の尻に伸びた。
双丘を優しく割り、奥にある小さな蕾に触れる。
しばらく中心に向かってくるくると撫でていたかと思うと、つぷりと窪みに何かが挿し込まれた。
先ほど身体中を愛撫した小さな器具だ。
行為の意味を獏良が理解していないことが幸いした。
拒んでいたら筋肉が締まり、痛みを感じていただろう。
放尿のショックで気が抜けていることもある。
小さな器具は潤滑剤の力も手伝って、易々と獏良の青い蕾の中に入っていった。
「なに?」
戸惑う獏良に男はスイッチを押して見せた。
「アッ!」
器具が身体の中で小刻みに振動を始める。
初めての感覚に獏良は泡を食った。
排便を促している感覚に似ている。
放尿の後で尚更そう思えてしまった。
快楽を逃す術を知らない獏良は、くねくねと腰を動かした。
男はその姿を満足げに見下ろし、身体を抱えた手で腰を、もう片方の手で太股を撫でた。
蕾への止まらない刺激に、ぞわぞわとしたものが身体の芯から生まれ、太股と腰に伝わり、さらに加えられる愛撫に快感が深まって全身へと行き渡っていく。
獏良は足を突っ張って仰け反った。
髪が肌に張りつき、浮かんだ汗が飛び散る。
胸の上のペンダントがチャリチャリと弾んで音を鳴らす。
ランプの薄明かりに照らされた幼い身体とは思えないほど淫らな光景。
「あう……」
獏良本人はこれが快感なのか不快感なのか分からない。
ただ本能で身を捩っている。
獏良の頬に赤みが差し、歓喜の色が現れたのを見て取ると、男の人差し指が蕾の中に沈んだ。
器具の周りを探るようにさらに中を慣らす。
「オレの指が分かるか?お前の中に入ってんだぞ」
足の間に下がる獏良の膨らみは小さいながらもぴょこんと起き上がっていた。
男の腕の中で足を開き、健気に主張する未成熟な雄の象徴。
「気持ちいいか」
男は恍惚とした表情でそれを眺める。
「んっ……んっ……」
強すぎる愛撫に翻弄されて、獏良には男の言葉を耳する余裕はない。
「なあ、そろそろいいよな……?」
男の下半身はパンパンに張り詰めてズボンを押し上げていた。
気が急いてごくんと喉を鳴らす。
指を抜き取り、スイッチから伸びる紐をゆっくりと引っ張っていき、
「ああ……」
ずるりと器具を引き抜いた。
快楽から解放された獏良の身体から力が抜け、だらんと腕が垂れ下がった。
蕾はひくひくと物欲しそうに口を開けている。
小さな身体にはとても不釣り合いだった。
「全部くれよ。お前の辛いことや悲しいことは全部オレが取り除いてやるから。お前を全部くれ」
男はズボンを下ろし、硬く隆起した強張りを取り出した。
びくびくと血管が浮き上がり、ぬらぬらと先端が濡れている。
歪に開けた口から歯を見せて荒い息を吐き出し、徐々に蕾の中心に向かって迫る。
欲望の証である溢れた雫が床に数滴落ちていった。
やがてヒクつく窪みに強張りを宛がうと、ずぶりと中へ挿し入れた。
「あうっ」
半分ほど突き進むと、男は動きを止めた。
入り口と中がきゅうきゅうと締め付ける。
「さすがに……っ……キツい……」
それ以上深くは進入せずに、ゆっくりと抽送し始めた。
無理に身体を抉じ開けることはせずに、入り口付近のみを刺激する。
勢い任せに腰を振るのではなく、中を確かめるように突く。
「オレの、挿入ってるんだぜ……分かる……かっ?」
「アッ、ン……んん……」
男の言葉など耳に入れる余裕もなく、突かれる度に獏良は喘ぐ。
自分の下半身がどうなっているか想像もつかない。
身体に侵入した強張りに柔肉を押し広げられている感覚だけを味わっていた。
身体の中に「何か」が入ってくれば圧力に声が漏れ、引き抜かれれば腰にざわざわと快感が走る。
じゅぷじゅぷと粘膜が擦れ合う音だけがやけによく聞こえた。
「忘れさせてやる」と男は言った。
言葉通りに獏良の頭の中は真っ白になっていた。
与えられる快楽を受け止めるだけで精一杯だ。
「んは、くッ、ん……」
男もまた快楽を貪っていた。
直接的な刺激は少ない。深く挿入しても、がむしゃらに突いても獏良を壊してしまう。
自慰の方がより強い快感を得られるに違いなかった。
しかし、初めて身体を繋げていること、先端を獏良が包み込んでいること、与える刺激一つ一つに獏良がいじらしく反応することに身体の芯が熱くなっていた。
乾いた心が満たされていく。
欲しいものを今手にしているのだ。
びくびくと脈打つ肉棒が限界だと訴えている。
「くっ……ウッ、ハア……」
獏良の中に肉欲を解き放てばどんなに気持ちいいだろうか。
可能な限り身体に肉棒を沈め、念願を果たした。
浅い挿入からの射精は、勢い良く放たれる飛沫が結合部分から溢れ、滑らかな双丘を汚してだらだらと伝い、床に落ちていく。
男はその様を目にし、汗まみれの顔で満足げに微笑んだ。
獏良の小さな膨らみは起き上がったまま。
男が先端を刺激すると、ピュッと少量の液体が飛び出した。
「ぁっ!」
ぐったりと動かなくなった獏良の小さな身体を男は抱えていた。
「目が覚めたら、お前はこのことを忘れているだろうよ」
ペンダントがかかっている胸に手を伸ばした。傷一つない白い肌だ。
針が指し示す場所を人差し指でなぞり、
「でもな、お前はオレのものだ。お前に害を為すすべてのものを排除してやる」
薄紅色の唇に口づけた。
「覚えてなくても、いつもオレはお前のそばにいる」
閉ざされた瞳にもなお真剣な眼差しが注がれる。
男は朝が来るまで獏良を抱きしめ続けていた。
夢は消えてしまえばただの幻。
「今度は現実で会おうな、宿主」
----------------
リクエストで頂いたショタで玩具プレイ+放尿です。
了くんは良い意味でも悪い意味でもバクラに守られていたのかなあと思いながら書きました。