ばかうけ

今、世の中には寒い寒い冬が訪れているのだと思う。
勢い良く後ろ手でドアを閉めて鍵をかければ、外から一切遮断される。
もう大丈夫だと、緊張の糸が切れたせいで、獏良の目から大粒の涙が零れだした。
周りから向けられる白い目、目、目。
自分が何もしていないことは分かっている。
しかし、獏良とゲームをした全員が昏睡状態なのも、時々獏良の記憶が途切れるのも事実。
気丈に振る舞っていた。
助けてと誰かにすがりたいのも、涙も我慢していた。
泣くのは一人になってからでいい。
誰かに見られるのは癪に触る。
重い身体に鞭打って、のろのろと自室に向かう。
無意味に広い無機質なリビングルーム。
ここには外同様に温もりも感情も無い。
ブレザーを放ってベッドの上で泣き崩れた。
誰か救って欲しい、この底無しの穴から。
ぎゅっと自分自身を抱き締めて鳴咽を漏らした。
「――ッ寒い。寒いよぉ……」
――誰か僕を抱き締めて。
カタカタと震えが止まらなかった。
ふいに何かを感じた。
「……?」
ここには獏良以外いるはずもないが、そっと後ろから腕を回されているようだった。
感触がする辺り――胸に手を伸ばしてみるが、当然何かに触れるわけではなかった。
「な、なに?」
開いた口に何かが侵入してきた。
「んっ」
それは獏良の咥内を遠慮無く這いずり回り、犯していく。
「んん」
獏良は訳も分からず無抵抗に目を白黒させているだけだったが、それが一本の長い指らしいということは分かった。
もう一本の見えない腕は服を擦り抜け、獏良の胸をまさぐりだしていた。
奇妙な現象に混乱する一方で、何もかも身を任せてしまいたい――そんな衝動にかられた。
気を紛らわしてくれるなら、亡霊でも悪魔でもなんでも良い。
獏良はぎこちなく指に舌を絡めた。
ゆっくりと指をしゃぶり、舐め回しては放し、また口に含む。
その繰り返し。
水音と息遣いのみが部屋に響く。
自分は一人で何をやっているのだろうか。
自慰の経験が無いわけないが、見えないモノに求めて縋ったことなどない。

何処かが狂っている。

頭では分かっているが、止められようもなかった。
それどころか、ねっとりと絡みつくような視線を背に受け、それが獏良の羞恥心を煽る。

――こんな姿見ないで。

そんな思いとは余所に、身体の奥がじんと熱くなってきた。
いつの間にか前がはだけ、獏良の白い肌が惜し気もなく晒されていた。
胸の先を摘みあげられ、くりくりと刺激される。
「ん……はぁ」
優しく、時に強くつねられ、その度に身体が小さく揺れた。
――もっと欲しい……。

獏良の手が自然と下に伸びた。
ズボンと下着を下ろし、剥き出したそれに手をかける。
既に少し立ち上がっているところに刺激が加わる。
手の動きは初めはゆっくりと、徐々に早く動き、獏良を追い詰めていく。
自分の手に他の意思が宿ったようだった。
いや、実際にそうかもしれない。
この手は獏良自身よりも、獏良の身体を熟知しているのだから。
何処を触れば感じるのか、どの程度の強さで刺激してやればよがってしまうか。
差し出される指を熱に浮されたように丹念に舐めていたが、それが突然引き抜かれた。

「……ッア」

口の栓として機能していた指が無くなり、官能的な声が外に漏れ始めた。
「ヤダァ……アッ……ン」
女の子のような自分の声に驚いた。
全身を愛撫され、理性のたがが外れたように身体をくねらせた。
「ああっ」
――もう駄目だ。
大きく上体が跳ね、精が周囲に飛び散った。
そのままベッドに倒れ込む。
気怠さに動く気にもなれずに身体をベッドに委ねた。
そしてずしりと身体が沈み、上から何かがのしかかってきたかと思うと、囁き声が聞こえた。
頭が朦朧としているせいか殆ど聞き取れなかったが、最後の一言はいやに耳に残った。

『眠ってな』

その言葉と共に獏良の意識は闇へ落ちた。

……もうすぐ……千年……王……。
囁き声の断片がどこかで反芻された。
――もうすぐ……?何が起こるんだろう?

「ん…」
ゆっくりと目を開け、起き上がる。
あれは夢だったと思いたかったが、目の前に広がる有り様が現実だと示していた。
シーツも制服も酷い乱れようだ。
「これ、僕一人がやったの……?ハハッ……」
渇いた笑いを漏らすが、さっきまでの惨めな思いは不思議と薄らいでいた。
先程の行為で少しだけ気分もすっきりしている。
「どうやって始末しようか……」
立ち上がるときにチリチリと、いつも肌身離さず付けている千年リングが鳴った。
「また転校しなくちゃなぁ」

彼の運命が大きく動き出すまで

もうすぐ

もうすぐ

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エイさんが代理リクエストしてくれましたー。
注文内容『R-18』(笑)。
最後まで行われてない模様です。
ラブラブなのはバクさんだけ。
もっと指で、したかった……。
エイさんリクエストありがとうございましたーv

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