ばかうけ

学園パラレルその1

「廊下に立ってろ」

「なんでオレ様がこんな……」
両手に水がなみなみと入ったバケツを持たされるという、非常に情けない格好をバクラは強いられていた。
サボってばかりで授業日数が危ないと、久々に学校に出て来た結果がこれだ。
二時限の半ばに教室の戸を開けた瞬間、クラスメイトの感嘆の声と教師の罵声に迎え入れられた。
授業を真面目に受けるつもりはなかったが、まさか教室の中に入れてもくれないとは。
このままバケツを放置して、帰ってしまおうかという気にもなってくる。
ガラガラ
バクラの思考を中断させるかのように教室の戸が開いた。
「ぷっ……」
「てめぇ」
獏良が口元に手をやってバクラをじっと見つめた。
「笑いに来やがったのか。授業中だろうが」
「堂々と遅刻してきた奴に言われたくないね」
不敵な笑みを浮かべながらバクラの横に並んで壁にトンと背を預けた。
「まあ、久し振りに来た生徒を有無を言わせずに立たせる無神経な先生もどうかと思うけどね。まぁたバクラくんが登校拒否になったらどうするのかなぁ」
壁を一枚隔てただけなのに、教室と廊下は別世界のようだ。
中の音が遠く感じる。
「で、何しに来たんだよ?」
ちらちらとスカートの裾から覗く獏良の白い足が眩しい。
「残念。お前に用事じゃないんだぁ。教材を持って来るように頼まれたの。日直だから。全員分。 人使い荒いよねぇ、あの先生」
とても頼まれ事の最中だとは思えないような涼しい顔でぼやく。
「良いのかよ、サボって。模範生徒サマ」
「あれを一人で持って来られるワケないもの」
バクラは獏良の真意が分からずに瞳を覗き込む。
「だから、手伝って」
「最初からそう言え」
「お願いだよ」
にっこりと微笑まれたら、断れるはずもない。
「チッ、仕方ねぇなぁ」
乱暴にがちゃんと床にバケツが置かれた。


だいぶむかぁしに面白がって作った海馬学園の設定で、書くべきだよと言われて調子に乗って書いたものです。
作った本人が今ではすっかり忘れてしまってるので不思議。
その場のノリで作った設定なので、今となってはちょっと恥ずかしいです(笑)。
とても分かりにくいですが、宿主さんは女子の制服着てますよ。

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学園パラレルその2

ぽかぽかとした陽気に真昼の屋上は包まれていた。
コンビニ袋を取り出し、バクラは一人で昼食にありつく。
味気ない袋から出て来たのは、おにぎりが二つとペットボトル。
貧乏学生の代表のような食事だ。
乱暴におにぎりの封を開けて口に頬張る。
コンビニのおにぎりと手で結んだおにぎりでは、暖かみも美味しさも全く違う。
同じご飯なのに、どこか固い感触のおにぎりを味わった。
「ああ!ここにいたッ」
小さなバッグを小脇に抱えて、屋上の戸を勢い良く獏良が開けた。
「探しちゃったよ」
そのまま小走りでやって来て、バクラの隣りにちょこんと座る。
「……お前、何勝手に弁当広げてんだ?」
つむじ風のようにくるくると素早く現れたので、反応が一寸遅れてしまった。
バクラが声をかけたときには、バッグから弁当箱が取り出されていた。
批難の声は獏良の耳に届かない。
「栄養が足りないよ、これじゃ」
さながら母親のように、口を尖らせる。
「う……」
「ハイ」
バクラが言い返す前に、眼前に弁当箱が差し出される。
よくよく見れば、獏良の弁当は一人にしては多過ぎる量だ。
「……こんな食事を続けてたら、倒れちゃうよ?」
獏良から先ほどまでの慌ただしさが鳴りを潜めた。
口元は小さな笑みを浮かべているが、瞳が心配の色に染まって潤んでいる。
差し出された弁当箱をバクラはおとなしく受け取った。
受け取らないなんて選択肢があるはずもない。
「はい、お箸も」
獏良の手作り弁当に抜かりはなかった。
別のパックに梨のデザートまで付いていて、まさに至れり尽くせりだ。
「たまご焼きはちゃんと甘くしたよ。甘いのが好きだったよね。あとベーコン巻きに……夕べの残りだけど、里芋の煮っ転がしと……」
弁当の中身の解説に、この料理の数々がバクラの好みに合わせて作られていることに気付かされる。
多めに作ったとか、あった物を詰めたとか、自分の弁当のついでに作ったのではなく。
「それから……えっと……うー」
それまで饒舌だった獏良が突然口ごもり、目を泳がせる。
「なかなかいけるぜ」
もう良いよと言うように、バクラはぽんと獏良の頭の上に手を置いた。
長い付き合いになるのだから、今の獏良の心情はよく分かる。
「ありがと」
屋上に心地の良い風が通り過ぎていった。


たぶん普通の学園恋愛ものに憧れてます。
こういうのんびりした一時っていいですよね。
くどいようですが、宿主さんは女子の制服を着てます。

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学園パラレルその3

「次、アテムと闘いたい者はいないかー」
生徒全員がデュエルディスクを装着していた。
この学校の一番の特徴は、デュエルが授業に組み込まれていることだ。
そして、このデュエルの成績が良ければ、他の成績が悪くても許されるという訳の分からない決まりがある。
弱者に用はない。強者には如何なる権利も与えるべし。
これが、この学校の創設者にして理事長の方針だ。
逆を言えば、肝心のデュエルの授業も受けなければ、どうにもならない。
「本気で卒業出来ないかもしれないのにッ」
今日は欠席が一人。
今日も欠席が一人。
獏良は授業に少しも身が入らなかった。
「いないのかー?じゃあ勝手に当てるぞ」
アテムとデュエルをしようという生徒はなかなかいない。
最大のライバルは緊急の仕事で欠席だし、城之内は敗退記録を更新した。
「じゃあ……」
教師が対戦者を指名する前に、
「ヒャハハハ!」
奇怪な笑い声が教室に響いた。
全員が何事かと慄くが、獏良だけはがくりと頭を垂れた。
「バカが来た」
ばん
「オレ様が立候補してやるぜぇ」
仁王立ちで教室の入口にバクラが立っていた。
「そろそろ点数稼どかなきゃなんねえからなぁ」
かくして、デュエルの火蓋が切って落とされた。

「珍しいな、アテムが負けるなんて」
壮絶なデュエルの余韻で誰もが夢心地だ。
「今日のヤツの気迫は尋常じゃなかったからな。背負うものがあれば、力になる。負けられない理由でもあったんだろう」
デッキを調整しながらアテムが言った。
「まあ、負けたら、留年だろうからね」
ちらりと獏良がバクラを盗み見る。
今度サボったら一緒に卒業出来ないかもしれないと、怒鳴ったことが効いたのかもしれない。
とりあえず、獏良は上履きを片方脱いだ。それを右手で握り締め、
「調子に乗るな!このサボり魔がぁ!」
勝利の高笑いをするバクラに殴りかかった。
ぱしーん
「何すんだ、テメー!」


バクラは学園もののクラスに一人はいる不良さんです。

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学園パラレルその4

「授業は肩凝るぜ」
「ちょっと来ただけなのに、なぁに言ってんだか」
二人だけの帰り道。
夕日を背に、並んで歩いでいた。
「明日はちゃんと来なよ」
「さぁな」
曖昧な返事に、獏良はバクラを睨みつける。
「もうっ」
バクラは横目で獏良の表情を探った。
普段通りの調子を装っているようだが、表情の奥に何かをためらっている様子が垣間見える。
「………」
沈黙が二人の間に流れ、過ぎていく。
バクラは何も言わない。
獏良の言葉を待っていた。
「あのさ……今日……ウチの家族、親戚の家に泊まりで出かけてるんだ……」
「それは……」
にんまりとバクラが笑う。
「誘ってるのか?」
直接的な言葉に、獏良の顔が真っ赤に染まり上がる。
「なっ!違ッ!……ただ……夕食を作りに行ってあげようかなあって……」
「そうかそうか」
浮かれた顔でバクラはぽんぽんと獏良の肩を叩く。 「ホント!それだけだって!もう!」
獏良の必死の否定は届きそうもない。
「久しぶりに、一緒に風呂に入るかぁ」
「だから!あー……」
言うじゃなかった。
頭を振って、後悔する。
狼狽するあまり、上手く言葉も出てこない。
「その後、どうなるかは分かってんだろ?」
獏良は首を横に激しく振った。
首がもげそうなくらいに。
「夕食を作りに来るってことは、そういうことだ。必然的にそうなる」
「なるか!バカ!」
通常の何倍も真面目なバクラの顔に罵声が浴びせられた。


二人は幼馴染な設定でした。
ラブコメはもう本当に好きで、書いてるときは幸せだったと思います。

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