ばかうけ

はじめてのキス

恋は頭で考えていると難しいもの。
それでも想い合っていれば自然に相手のことを受け入れられるはず……というのは、とても理想的な話で、現実はそう甘いものではない。
バクラも例に漏れず、目の前に立ちはだかる難題に頭を抱えていた。
悩みの種となっているのは宿主である獏良で、背格好が小さい頃から見てきた少年だ。
その少年を手に入れるために気の長い努力をしてきた。
好きな菓子を与えてみたり、望まれるままにゲームの相手になったり、映画鑑賞と鑑賞後の評論会に付き合ったり。
童話に登場する狼のように、ぱくりと一口で丸飲みできるところを辛抱強く我慢し、少しずつ距離を詰めていった。
獲物を前に焦ってはいけない。過去の行いから元々の信用はゼロ。一度でもしくじれば、もう二度とチャンスはないだろう。未来永劫手に入らなくなるのだ。
不規則に揺れ動く人間の感情を読むことには苦労はしたが、その甲斐あって想い合う仲になることができた。あとは流れに任せてどうとでもなるはず。
ところが、話は大団円にはならなかった。
恋愛経験の少ない獏良は、何かにつけて恥ずかしがる。指先で触れるだけが精一杯。顔を近づければ逃げ出してしまう。
ゴールと思われた場所のすぐ先で、もう一つの大きな壁が突如として現れたのだ。
これでは蛇の生殺しも同じ。バクラはさらなる我慢を強いられることになった。

「宿主」
愛称を呼んで両肩に手を置けば、するすると視線が横へ逃げていってしまう。
「なに?」
ほんのりと赤らんだ頬や硬直した手足を見ているのは楽しい。
恥じらいつつ目を伏せ、それでも唇を辛うじて笑みの形に作る姿も悪くない。
けれど、毎回毎回同じことを繰り返していれば、こうべを垂れたくもなる。このままでは、お手てを繋いで終わりにでもなってしまいそうだ。
いつもなら寸前で止めていた。せっかく芽生えたものを摘んでしまうのは勿体ない。
獏良の背中に手を回し、もう片方の手で薄く開いた唇を撫でた。
蕾のようにふっくらとした感触。まだ誰の侵入も許していない。白い肌によく映える桜色をしている。
ゆっくりと水平に指を滑らせていると、何を求められているのか、本人も分かったようだ。目元に赤みが差した。けれども、逃れようとする素振りは見せない。こつんと額を合わせてみても、じっと動かないでいる。それならば、と今度は唇へ。
二人の唇が触れ合った瞬間に少しだけ獏良の身体が震えた。反応があったのはそれだけで、あとは静かにバクラを受け入れる。
最初の目標には無事に到達した。しかし、これで終わるのでは勿体ない。焦らされただけ、バクラの中にむくむくと悪戯心が湧き上がってきた。
すぐに唇を解放せずに、音を立てて下側に吸いついた。
「……ぅ」
微かに唇が開いた。すかさず隙間に入り込んで下唇を軽く噛む。相継ぐ刺激に翻弄されて獏良から力が抜けていく。
手加減はしてやらない。待たされたのだから、これぐらいの仕返しは許されるだろう。口内をたっぷり味わってから唇を離した。
獏良の口からは熱い吐息が漏れている。目元だけでなく、頬も額も首も赤く染まって艶かしい。初心者には少し刺激が強すぎたようだ。
征服欲がほんの少し満たされて、バクラの胸に優越感が広がる。
これから徐々に触れ合うことを教えていけばいい。獏良は素直な性格をしているから、きっと覚えも早いはずだ。
バクラが喜びを抑えきれずに獏良の髪を撫でていると、
「ねえ……」
そよ風のような囁き声がそっと耳に届いた。
「……知らなかった。キスって気持ちいいんだね」
はにかんだ笑顔に当てられて、バクラは獏良の肩に顔を埋める羽目になったのだった。

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恋愛一本勝負、引き分け。


夏休みの宿題 ※下ネタあり

広げられたのは一枚のA4用紙。縦に三行、横に十列、合計三十マスの表が書かれている。
「で?」
胸を張って得意気に紙を見せつけている獏良に、バクラは冷めた目で話の続きを促した。
「だから、これは君への夏休みの宿題なんだ」
「答えになってねえっつーの」
今、童実野高校はちょうど夏休み真っ只中。
終業式では生徒たちに山積みの宿題が出された。七月中から片づけていかなければ、終わらせるのが厳しい量で、獏良も毎日せっせと机に向かっていた。
その間、バクラは暇を持て余し、昼寝ばかりの日々だった。なにしろ獏良にちょっかいを出せば、今度は五分刈りどころか丸坊主にさせられるのだと猛烈に反発される。
勝手に身体を使うことも禁じられた。そうすると、他にすることがないのだ。千年リングの中でじっとしているしかない。
そうしてバクラがうつらうつらしている間に、用途不明の紙が出来上がっていたらしい。
しかも、作った本人はバクラの「夏休みの宿題」だと言う。机に向かいすぎて頭がおかしくなったのだろうか。柄にもなく案じる心が湧いて出た。
当の獏良本人は病んでいるどころか、瞳をきらきらと輝かせている。
リビングの壁にマスキングテープで紙の四隅を留め、揃えた五本の指で軽く叩いて改めて示し、
「これから、君が夏休みの間に良いことをしたら、ここにスタンプが貯まっていきます」
ポケットからプラスチックの小さな円筒形を取り出してバクラに見せた。
可愛らしくデフォルメされた天使が面に刻まれた判子。
「全部で三十個。最後まで辿り着いたら、ご褒美があります。ただし……」
獏良はまったく同じ紙をもう一枚取り出し、一枚目の真下に貼りつける。
「もし悪いことをしたら、こっちのスタンプが貯まるからね」
今度は迫力に欠ける悪魔の判子をバクラに見せた。
「先にこっちが貯まったら罰ゲーム」
「……なんだよ、罰ゲームって」
普段は執行する側のバクラは眉を潜め、獏良をじろりと見据える。
特別な力もないただの人間が、闇の力を保有する、謂わば高次元の存在に制裁を加えるなどできるはずがない。半端なことをしてきたところで返り討ちだ。
「もう一人の遊戯くんを呼んで、朝まで恋バナをしてもらう」
「やめろォ!それはッ」
さすがのバクラも顔色を青くした。
どうやら獏良の狙いは、バクラの更正らしい。
発想は不良学生に対するものと同じになってしまっているが、ご褒美で釣る方法は大人にも子どもにも効果を発揮するはずだ。
それにはまず、ご褒美の内容が非常に重要となってくる。
「そこまで言うンなら、それ相応の見返りはあるんだろうな?」
バクラからの問いかけに、獏良は身体をもじもじと揺すり、太股の前で指を擦り合わせた。
「うん。まだ秘密だけど、ちゃんと考えてあるよ。少し恥ずかしい……。マニアックかも……。でも喜んでもらえると思うな」
「なんだよ恥ずかしいって……」
口ではぶつくさ文句を言いながらも、バクラは獏良の申し入れを受け入れた。ご褒美とやらに少し興味もある。
かくして、バクラにまったく似つかわしくない、束の間の「良いこと探し」が始まったのだった。

まず、「良いこと」の概念が人間とは異なることが大きな壁になった。
獏良の代わりにまとめられたゴミ袋を所定の位置に持っていってやれば、スタンプが一つもらえた。
では、似たような大がかりのことをすればもっと喜ぶだろうと、部屋の隅に積んであった廃材を外に運び出したら、逆に悪魔スタンプが増えた。
判定に抗議をすると、なにやらゴミを捨てるのにも決まった曜日があるらしい。ゴミに見えても必要なものもあるから勝手に捨てるな、と余計に釘を刺されてしまった。
コンビニにたむろしていた柄の悪い連中を拳に任せて追い払ったときは、乱暴はよくないとこっ酷く叱られてしまった。
近寄ってくる赤の他人を怒鳴りつけるのもダメ。不必要な買い物をしてもダメ。獏良の望みを叶えるために心を読むのもダメ。
「良いこと」は、思ったより難しいらしい。
獏良が勝手に始めたことなのだから、すぐに投げ出しても良かったが、ご褒美とやらが頭にちらついた。内容を伏せられているため、余計に気になってしまう。
――ご褒美。ご褒美ってなんだ?オレが喜ぶマニアックで恥ずかしい秘密のご褒美……。
考えているうちに、記憶の省略と歪曲を繰り返し、獏良の言葉が塗り替えられていた。

「これがご褒美だよ……」はらり、と落とした衣服の下には、大胆にカットされた薄い生地の下着が――。
背中を流すのだと押し切られて風呂場に二人。背後から当てられたのは、泡のついたスポンジではなく、すべすべとした人肌の感触――。
朝になりベッドから出ようと身を起こすと、白い手足が絡んで引き止める。「もうちょっとだけ……」潤んだ瞳がじっと見つめていた――。

――ご褒美……。
日にちを経るごとに想像が膨らんでいった。
頭の中で起こっていることには誰も口出しできない。止める者がいなければ、あとはもう一直線だった。
ご褒美を手に入れるべく、良いこと探しに熱が入った。天使のスタンプが怒涛の勢いで増えていく。一方で、悪魔のスタンプが増える勢いも負けずとも劣らない。
横断歩道の前でおろおろする老婆が邪魔だったので、荷物を奪って反対側の道へ運んだことに、獏良はいたく感激をしてスタンプを三つも押した。
やはり、「良いこと」とは難しい。
人間にとっての善悪の判別がつかないままに、とうとう天使のスタンプが先に貯まった。
「やればできるじゃない」
獏良はまるで自分のことのように喜んで惜しみなく拍手を送った。
「これを機に自分の行いを見直すこと」
たらたらと続く説法にバクラはもどかしさを感じて後ろ頭をぐしゃぐしゃと掻き回し、
「ンなのいいから、早く褒美を寄越せ!」
「うん、分かった。準備するから待っててね」
乱暴な言い種にも気を悪くするわけでもなく、獏良は素直に頷いて自部屋へと引っ込んでいった。
ご褒美のために着替えをするのか、心の準備が必要なのか。バクラは落ち着きなく爪先でとんとんと小刻みに床を蹴る。想像だけではなく、他の部分も膨らみすぎて限界だった。
「お待たせー」
しばらくして部屋から出てきた獏良には何の変化もなかった。長方形の紙箱を小脇に抱えている以外は。
「じゃーん!」
箱の表面がバクラに向けられる。
暗色をベースにしたデザインにおどろおどろしいフォント。背景には洋館らしきもの。ところどころ血飛沫が描かれている。
「あのね、これは殺人事件が起こった洋館で、プレイヤーは殺人犯となって事件を追体験するボードゲームなんだ。ストーリーがよく練られているし、ギミックも凄くて……。それが災いして日本ではまだ売られてないんだ。過激過ぎるからね。マニアックな内容だから、ちょっと人に見せるのは恥ずかしいけど、一部ではカルト的な人気あるんだよ!」
「は…………?」
不気味なパッケージが押しつけられんばかりにバクラに迫ってくる。
おかしい。ご褒美の話をしているのではなかったのか。
「……それがどうした?」
「あ、ごめんね。ちょっと熱くなっちゃった。これがね、ご褒美」
「ん??」
「僕とこれをプレイするのがご褒美」
この夏一番の笑顔がそれとは似つかわしくないパッケージと共に花開いた。
それから、バクラは生気のない目で一晩中ダイスを振り続けた。
「残暑を乗り切るには、やっぱりホラーだよね!」
獏良は正反対にうきうきと残り少ない夏休みを満喫したのだった。

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更生失敗!


ぴょんぴょんモーション ※獣化、獏良→おっとりめのウサギ、バクラ→デレデレウサギ

リョウは草原を軽やかに駆け抜けるウサギ。
今日も美味しいエサを求めてぴょこぴょこ西へ東へ。
時折、鼻をヒクヒクさせて、耳をピンと立てて、危ないものがないか探ってはみるものの、警戒心は他のうさぎよりも薄い。
食事をゆっくりマイペースに取り、丁寧に毛繕いをしてから巣穴に戻る。
巣穴があるのは林の隅っこ。
どっしりとした太い幹が自慢のブナの根元に入口がある。
リョウがたった一人で作った新しい巣穴。
まだ部屋数は少なく、工事の途中だけれど、なかなか気に入っている。
力と体力は平均以下でも器用さには自信がある。
通路の曲がり具合や滑らかに整えた壁は自画自賛してしまうほどの出来だ。
しかし、今は少し作業を急がなければならない状況にある。悠長に巣穴を飾り立てる時間はない。
だんだんと肌寒くなってきた。冬に備えてもう少し深く掘り進めたい。
餌が少なくなることも考えて、非常食を集めなければならない。
そうしなければ、硬い木の皮を噛りながら春を待つことになる。
幸いブナの木は栄養満点の実を落としてくれる。
巣穴の周りでちょこちょことブナの実を掻き集めることも最近の日課だった。
不思議なことに、実を探しているとクローバーやら葛も地面に落ちている。
もしかしたら、ブナがくれたのかもしれない。
リョウは納得をして、実と一緒に野草も有難く巣穴へ運ぶことにした。

ある朝、リョウがいつものように巣穴から顔を出すと、一羽の見知らぬウサギが見下ろしていた。
ひゃっと頭を引っ込めてから、相手は同じウサギなのだから逃げる必要はないと思い直して、おずおずと巣穴から這い出た。
「コンニチハ……」
改めて相手を観察すると、リョウと同じく真っ白な毛並みで、どことなく不機嫌そうな顔をしている雄ウサギだった。どうやら同じ種類の仲間らしい。
リョウは少しだけ気を許し、相手の鼻に自分の鼻をちょんとくっつけた。鼻と鼻を合わせるのはウサギの挨拶。
匂いを嗅げば、悪いウサギではなさそう。それどころか、何やら知っている匂いがする。どこで嗅いだ匂いだろう。
リョウがヒクヒクと鼻を動かしていると、不機嫌ウサギはぷいと顔を傾けて逃れ、
「お前、どこのモンだ」
問われたリョウは、目をぱちくりさせてから、
「僕はリョウ。仲間はいないんだ。独り立ちしてから、えっと……少しのんびりしてて……ここには僕だけが住んでるんだ」
「なんだ、はぐれ者か」
「うっ……」
不機嫌ウサギの言う通りだった。本来ウサギは群れで生活するもの。一羽で行動することはとても危険なこと。
のんびりとした性格が災いして、リョウは群れから外れ、いつの間にか一人ぼっちになってしまったのだ。
シュンとなったリョウの口からは、「キュウキュウ」と鳴き声が漏れた。
「君は……?」
「オレ様はバクラ。お前よりもずっと前からここに住んでるモンだ」
どうやらリョウが作った巣穴はバクラの縄張り内だったよう。
相性が悪ければ、去らなければならないのが自然の摂理。
バクラの審判を待っていると、
「お前は全然なっちゃいねえ」
「は?」
予想外の言葉が飛び出した。
「緊張感はないわ、巣穴作りはチンタラしてるわ、どんくさいわ。いつ食われてもおかしくないぞ」
「はあ……」
どうやらバクラはリョウを追い出すつもりはないようで、黙って聞いていればどんどんとダメ出しが続いた。
いつから見ていたのかという疑問がリョウに湧くも口を挟める隙はない。
「まあ、冬に向けた準備は悪かないけどな」
ようやく言葉が途切れたところで、
「君の言うことは大体当たってるかもしれないけど、巣穴作りは結構頑張ってるんだよ。それに君には関係ないじゃないか」
いくら温厚なリョウでも初対面で言われっ放しは釈然としないものがある。
「なんだと?」
「見てて!」
リョウは巣穴に頭を突っ込み、前足でぺたぺたと土を均し始めた。
「こう……やって、土を固めて……頑丈に……」
一生懸命に作業を見せるため、後ろ足で踏ん張り、巣穴から出た尻尾が左右にふりふり。
それを見たバクラはその場によろり。
「お、お前……」
――無防備すぎやしないか……。
そもそも、バクラがリョウを見つけたのはずっと前のことだった。
草原でたんぽぽに囲まれて、太陽の光が気持ち良かったのかスヤスヤ。
野生のウサギにあるまじき無防備な姿に面食らい、話しかけようか追い出そうかバクラが迷っていたところで、むくりと起き上がったリョウがたんぽぽをムシャムシャ。美味しさに尻尾を振って駆け回った。
なんと呑気なウサギなのか。
それからバクラは、呆れ半分、興味半分でリョウの動向を観察した。
リョウは特に目的もなく、一羽でのんびりと暮らしているようだった。
群れを成して生活するのは下らないことと考えるバクラと同じ、ウサギには珍しいタイプらしい。
相性は悪くないかもしれない。御し易そうなのもいい。
バクラの持った印象を端的に表現すれば、「かわいい」。
それからというもの、バクラはリョウの住むブナの木に身体を擦りつけて匂いを移し、せっせと柔らかくて美味しそうな草を届けた。
それなのにリョウはバクラの存在にまったく気づくことなく、ただ日を重ねるだけだった。
――あいつの鼻は壊れてるのか……!
このままでは冬になってしまう。
とうとうバクラは痺れを切らして、リョウの前に姿を現したのだった。

せっかく初めて会話をするというのに、舞い上がってしまい、なんだか妙な流れになってしまっていた。
なぜ巣穴作りの話になったのだろうか。何を見せられているのだろうか。
どうやら言葉を選び間違えたらしい。
そうバクラが後悔するのも束の間、目の前で巣穴から突き出したリョウのお尻が振り子のように揺れている。
本人の意思とは無関係に、バクラの目にはこの上なく扇情的に映ってしまっていた。
バクラはまるで獲物を狙う肉食獣のように体勢を屈め、我慢できずに揺れるお尻に目がけてぴょーんと跳んだ。
「……と、こんなふうに穴を広げて」
もうすぐというところでリョウが頭を上げ、背後にいるはずのバクラに巣穴を見せるために横へ移動した。
空中で方向転換できるはずもなく、バクラはそのまま巣穴にすとんと落ちる。
ごろごろと通路を転がり、肩倒立の姿勢で背中を壁に打ちつけた。頭は地面に足は空中へ。
「ど、どうしたの?急に」
「いや……ちょっと住み心地を確かめただけだ」
バクラは身体を震わせて土を払い、地上へと戻った。
「まあ、巣作りの腕は悪くはないな」
「でしょう?」
「だが、すぐに冬になっちまうぞ」
褒められたのも一瞬のうちで、続く容赦ない言葉にリョウの尻尾がしゅんと下がる。
「オレの縄張り内で中途半端なことをされたら困る。しょうがねえから手伝ってやるよ」
バクラの言葉にリョウは「ぷうぷう」と鳴き声を上げ、
「ほんと?」
その場で高く飛び上がった。
嬉しさのあまりに身体をバクラに擦りつけて、
「ありがとうー。僕ずっと一人ぼっちだったから、仲間ができて嬉しいよ」
バクラは寄ってきたリョウの身体をペロペロと舐めて応えた。
「寝室は一緒な」
「なんで??」

こうして一人ぼっちだったウサギはつがいとなって、少しだけあたたかい冬を過ごせることになったのだった。

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動物の求愛行動はいいものです。

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