パーティが華やかに行われている中、一人で柱の影でうずくまる獏良。
慣れないヒールで足を痛めたのだ。
無理をして何事もないように振舞っていたが、もう我慢の限界だった。
じんじんじん。
痛む足に顔が歪む。
――背伸びなんてするんじゃなかった。
足よりも、心の方がずっと痛い。
初めてのパーティで張り切って着飾った。
家を出るまでは間違いなく上機嫌だった自分。
惨め。
優雅に微笑んでいる他人と比べると、ますます自分が情けなく思えた。
膝に顔を埋め、ぐっと涙を堪える。
このまま帰ってしまおうか。
こっそり抜け出せば、獏良が抜けたことなど誰も気づかないだろう。
――僕なんて居ても居なくても良いんだ。
ふらふらと立ち上がり、柱に背を預ける。
いつの間にか、結い上げた髪がほつれていた。
「ふふっ」
目の前に鏡があったら、この哀れな姿をそっくりそのまま映し出してくれただろう。
会場に背を向けようとしたそのとき、
「何やってんだよ、こんなところで」
ぶっきらぼうな声が投げかけられた。
振り向くと、黒いスーツに身を包んだバクラが立っていた。
「お前には関係ないだろう……」
いつもの憎まれ口も破棄がなく、ただの強がりにしか聞こえなかった。
バクラはそれに触れることなく、
「見せてみろよ」
「え?」
「足」
獏良の足元を指差す。
「やだっ。な、何言って……」
――ばれてたんだ。
抗議の声など構いもせず、バクラはしゃがみ獏良の足を掴んだ。
「触るなっ」
靴を脱がせ、難しい顔で獏良の足を睨む。
「ダメだな」
「えっ?ちょっと……」
バクラは軽々と獏良を抱き上げた。
「こんなになるまで、ムリするんじゃねぇよ」
そのまま賑やかな会場を後にした。
「あっれぇ?バクラ、もう帰るのー?」
途中、ほろ酔い気分の友人から声がかかる。
「つまんねぇから、早退」
さらりと言ってのけるバクラの腕の中で、獏良が顔を真っ赤にしていた。
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日記に堂々と載せてあった妄想文を発掘しました(笑)。
少女漫画なバク獏を書きたかったんですよ、たしか。
本人本気です。
バクラをかっこよくしたいという野望もあったようで。