ばかうけ

今日も闇の中で秘め事が繰り返される。
何度も何度ももらされる吐息と甘い声。
二つの見えない影が折り重なっていた。
ぎしぎしぎし
身体が軋む音が微かに聞こえてくる。
自然の摂理に反する行為だと人は言う。
人間の身体はそのようにはできていないのだ。
いつからだろう。この行為が行われてきたのは。

見下ろすかたちで、バクラが獏良に愛を囁いた。
見上げるかたちで、獏良がバクラに愛を囁き返した。
バクラが至福の微笑みを浮かべた。
普段の鋭い表情とは打って変わり、心が満たされた優しい笑みだ。
行為自体も獏良に快楽を与えてやろうという気遣いに溢れ、力で押さえつけるのものではない。
バクラの唇が透けるような白いうなじに落ちる。
獏良の唇が小さく息を吐き、両端を上げた。
しかし、うっすらと開いた目には光がなかった。
上手く微笑みを作ってはあるものの、瞳に深い闇色が差していた。
上手くいったもんだと、獏良は心の中で嘲笑した。

誰が心を開くものか。
すべては終わるときのために。
すべては復讐のために。
にっこりと笑って受け入れるフリをするだけで簡単におちた。
あとは心を殺し、身体を開いて、耐えるだけだった。
既に傷つけられた心と身体、これくらい大したことはない。
それに、最期のときに真実を知って浮かべる表情を思い描けば、少しは気が晴れる。

文字通り愛の言葉を囁くバクラと、呪いの言葉を囁く獏良。
二つの言葉が重なり合い、短い曲を奏でる。

愛してる

愛してる

愛してる

口にすればするほど呪いは強固になる。
バクラが壊れものに触るような優しい手つきで獏良の顔を包む。

「……了」

獏良の目から涙が零れた。
生理的に流れるものではない。

そんな目で僕を見ないでよ。

激しく獏良の心が揺れた。

僕はお前のことが憎いんだよ。

「バクラァ」

獏良は耐え切れずに鳴咽をもらした。
両者が両者を求めながら、再び身体を合わせた。
何度も何度も互いを呼び合いながら。
名は愛を紡ぐ。
獏良がそれに気づくまで、そう遠くはなかった。

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やっぱり私はハッピーエンド主義なんだなぁと悟ってしまいました。
記念すべき初エッチ…。
赤飯炊こうぜ☆
そんな雰囲気ではない感じ。

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