獏良の休日の昼間などつまらないものだ。
ノートのまとめや予習、ただそれだけで時間が潰れる。
機械的に回答蘭を埋めていく獏良だったが、一つの問いにぴたりと動きが止まる。
しかしそれも一瞬で、後は淀みなくペンが動き、何事も無かったかのように次に進んでいった。
「ふう……」
一通り英語の予習が終わり、椅子の上で背伸びをした。
何気なくぱらぱらとテキストをめくると、先程の問題が見当たった。
If I were a bird, I could fly to you.
何ともない、この手の英語のテキストで使い古された文章だ。
もし私が鳥なら、貴方の元へ飛んでゆけるのに。
初めて目にした時はなんて気障な文章だと思ったが、今見ると不思議とそうは感じない。
以前はその綺麗すぎる響きが、何処か作りものめいていると感じたからかもしれない。
今はその言葉が、自分の思いが、作りものなどではないと分かっているから、自然と頷くことが出来るのだ。
獏良は随分自分も変わったものだと笑って、テキストを閉じた。
癖になってしまった、胸の上に手を置く行為の先には、今は何もない。
I wish……
鳥になれたら良いのに
If I were a bird……
もし僕が鳥なら……
それは一つの願い
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塾(だっけか?)のCMで有名な一文。幻想的で好きですv
いつかまた会えることを願って