ばかうけ

デッキの山を一枚一枚めくる。
僕は、あまりデュエルは得意じゃない。
TRPGの方が元々好きだし、小さな世界でちまちま遊んでいる方が楽しい。
もちろん、デュエルをすること自体は好きで自分のデッキもある。
遊戯くんたちとも遊ぶ。
でも、応援している方が性に合ってる。
勝てることもあるけど、公式戦に出る気はない。
デュエルの大会は派手すぎて少し戸惑ってしまうから。
次の一枚は――。
「絵画に潜む者」
そのおどろおどろしい風体にはかえって失笑してしまう。
誤解されたくないんだけど、これは僕のデッキじゃない。
あいつの――あの迷惑な同居人のだ。
いつの間にか、僕の見たことのないカードが増えていた。
どこから手に入れたのかは知らない。
カードの保存状態がそれぞれバラバラで背筋が寒くなる。
いや、あまり深く考えないようにしよう……。

デュエルのデッキには持ち主の人柄がはっきりと表れると思う。
その人によってこだわりもあるので見ていて面白い。
例えば、アテムくんのマジシャンズデッキ。
ブラックマジシャンを中心に構築されたとてもバランスの良いデッキだ。
他にも起死回生の補助カードもたくさん組み込まれているので、彼の牙城はなかなか崩せない。
海馬くんはブルーアイズデッキ。
ドラゴン一族主体で構築されたデッキだ。
アテムくんに挑むために組み直す為に精練されていった印象がある。
愛用しているブルーアイズの為のデッキでもある。
本人の性格が反映された攻撃特化型のデッキだ。
そして、遊戯くんのデッキは二人とは全く違う。
アテムくんと同じくブラックマジシャンを入れているけど、トリッキーな戦法をする。
決して攻撃的じゃないのに、いつの間にか自分のペースに相手を引きずり込んでしまう。
無自覚だと思うけど、相手を翻弄するのがとても上手い。
新しい戦法を取り入れ、対戦する度に僕の目から見ても成長してると思う。
迷いがなくて、とても強い。

アテムくんと海馬くんのデッキはとても力強くて憧れる。
僕ならもう少し保守的なデッキにはなっちゃうな。
ここにあるデッキはとても個性が強い。
持ち主の強いこだわりを感じる。
このオカルトデッキは一つのコンボに的を絞った一点集中型のデッキだ。
カードもアンデッドや悪魔系統で綺麗に統一されている。
普通ならコンボを崩されたら終わりだけど、そうならないように幾重にも罠が張り巡らされている。
きっと、拘り抜いたこのデッキは恐ろしくも強い。
型に嵌ったら強いんだろうなとも思う。
イヤらしいけど、一種の様式美を感じてしまう。
でも、僕ならもっとバランス良く組むし、保険は掛けておく。
それをしていないのは、いっそ清々しい。
カードをめくる度に、 なんとかのゾンビやら死霊なんとかやらが出て来る。
凄い趣味だなあ……。
これを使って戦ってたんだ。
持ち主は、もういない。
このデッキが使われることは、もうない。

ぽたっ――。

カードの上に一滴の水が落ちた。
「あれ……?」
いつの間にか、目から涙が零れ落ちていた。
泣く必要なんてないのに。
カードがダメになっちゃう。
慌てて袖で水滴を拭うも、
ぽたっ
もう一滴が新たに落ちた。
嫌になるなあ。なにやってるんだろう。
今度は目を腕で擦った。
「……はあ」
鼻をすすって一呼吸置く。
涙腺はどうにか落ち着いてくれたみたいだ。
ティッシュで拭いたけど、心配なので濡れたカードは横に避けておく。
次のカードは――。
めくると相変わらず気持ちの悪いカードが現れた。
これは……。
僕の買ったカードだ。
買ったけど、全然趣味じゃなかったからデッキに入れないでおいたカード。
使ってたのか。
僕がいらないと思ってたのに。
好みが違いすぎて可笑しい。
思わず笑ってしまう。
何を考えてこのカードを入れたのか、デッキを組んだのかは分からない。
このカードたちはもう使われないけど、ここにある限り生き続けるんだ。
見終わった後は僕のカードと混ざらないようにしまおう。
誰にも触れられないように箱の中に入れておくんだ。大切に。

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ネタバレはありませんが、映画(THE DARK SIDE~)の影響を受けまして。了くんもそうならいいなあなんて。
何のカードなのかはご想像にお任せします。雑魚カードでもいいですし。
個人的には了くんのデッキはオカルトでもいいし、そうでなくてもいい派です。

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