ここからは、本編終了後の話になります。
本編読了後にお進み下さい。
こうして、一人の男にかけられた呪いは、一人の少年によって解かれました。
もう男を縛るものは、何もありません。
生まれ変わった城で、二人は仲良く暮らしていました。
ただ、そこには一つの問題があったのです。
その後の二人
「了ッ!」
背後から呼び止められ、了は立ち止まってくるりと向きを変えました。
胸元の千年リングがチャリチャリと鳴ります。
「何かあった?」
バクラが廊下の先から大股で了の元へとやって来ました。
わざわざ呼び止めるなんて、何か急ぎの用事でもあるのかと、了は思いました。
「何かって……最近ゆっくり出来てないだろ」
バクラの言う通りでした。
呪いが解けてから一ヶ月経ちましたが、王様と正式に連絡を取ったり、克也を城に受け入れたり、慌ただしいことだらけです。
今や城の門は開かれ、することは山積みでした。
「うーん、確かにそうだけど……ゆっくり出来てないわけじゃ……」
忙しいとはいえ、食事をする時間がないとか、休む時間がないというわけではありません。
了はここ一ヶ月のスケジュールをその場で思い返し始めました。
のんびりとした了の態度に、バクラは片足をとんとん踏み鳴らします。
いつまで経っても唸っているので我慢が出来ず、
「二人っきりで!ゆっくり出来てないだろッ!」
「二人っきり」の部分を強調して、大きな声を上げました。
これにはのんびりとしていた了でも理解が出来ました。
了の顔が真っ赤に染まっていきます。
「父さんに聞こえちゃう……」
「ンなもん、聞かせてやれ!」
呪いが解けてから一ヶ月経ちましたが、二人の関係に進展はありませんでした。
最後にしたキス以降は何もなかったのです。
その時の記憶がないバクラにとっては、了が千年リングを受け取った夜の触れ合い以降になるかもしれません。
やっと、たった一人の愛する人を手に入れたと思ったのに、何もすることが出来ないなんて、バクラの我慢も限界に近づいていました。
気色ばむバクラに、了は慌ててこう言うしかありませんでした。
「分かった!今日は全てお休みにしよう!」
二人はバクラの部屋にやって来ました。
相変わらず、必要最低限の家具以外は何もない部屋です。
了がここを訪れるのは、二度目でした。
前回は何もかも必死でしたが、今回は落ち着いている分、バクラの部屋に入ることがどうしようもなく恥ずかしくなってしまいます。
了が休みの提案をしてから、バクラはこの上なく上機嫌でした。
あのまま廊下で抱きつこうとしたのを、
「父さんに見つかっちゃうからやめて!」
と、了が必死に止めたくらいです。
部屋の中央で硬直したまま動かない了を、バクラは後ろから抱き締めました。
驚きで一瞬だけ了の息が止まりました。
しかし、すぐに密着した身体に意識がいきます。
背中に感じる体温と耳元の息遣い。了の前に回された腕。
バクラに包まれている感覚。
慣れない緊張と温もりの安心が、了の中で入り交じります。
それは、何とも言えない心地良さでした。
しかし、そんな緩やかな触れ合いも、ずっとは続きません。
ゆっくりとバクラの手が了の胸元へと伸びました。
女性のものとは違って膨らみはありませんが、ただ抱き締めてられているのとは訳が違います。
了に聞こえるだけの声で、バクラが何事か呟きました。
「……うん」
それに了は小さく頷きました。
バクラのベッドに了は横になりました。
なんとも柔らかい感触が、了の身体を受け止めます。
その上にバクラが跨ると、ベッドがずしりと揺れました。
了はどうしていいか分からずに、バクラを見上げています。
決して、欲がない訳ではありせん。
ここ一ヶ月は、一人で慰める夜もありました。
けれど、こんなことは初めてなのです。
身体が動かなくなってしまうのも無理はありません。
それでも、バクラの唇が触れたとき、心臓の鼓動はうるさいくらいに高鳴っていましたが、自然と受け入れることが出来ました。
これでいいんだと、身を任せられたのです。
それから、二人はたくさんのキスをしました。
最後の一線を越えることはありませんでしたが、二人は飽きるまで抱き合ったのです。
肌と肌が触れ合う感触は心地良く、了はうっとりとバクラにしがみついていました。
欲を吐き出した後も、二人はゆるゆると身体をくっつけ合い続けます。
バクラは了の髪を指に絡ませ、
「なァ、この部屋に引っ越して来いよ」
唐突に切り出しました。
「え?」
「広さ的には充分だろ。部屋が遠すぎンだよ」
突然の提案に、了は目を大きく開いていましたが、
「いいよ。この城は広すぎるもんね」
にこりと微笑みます。
その返事に満足をしたのか、バクラは大欠伸をしました。
「一眠りするかァ」
まだ、太陽は高い位置にいます。
なんとも、贅沢なものです。
「うん、今日はゆっくりしようね」
二人は裸のまま微睡み始めました。
了の胸にかけられた千年リングが、窓からの射す太陽の光を浴びて、きらきらと光っていました。
そして、バクラのがらんと寂しい広すぎる部屋は、了のもので満たされたのです。
----------------
こういう本編の中に入れてしまうと、話がブレてしまうので泣く泣くカットしていたのです。
少しだけですが、補完ということで。