ばかうけ

「獏良くん!明日、誕生日でしょ?」
昼休みも終わりに差しかかった時、杏子が身を乗り出して聞いてきた。
突然のことに驚きながらも獏良は頷く。
「そうだよ」
それを聞いた周りの友人たちが、わっと獏良に詰め寄ってきた。
「えー!そうなのかよ!早く言えよー」
「こりゃ、祝わないとな」
「早く準備しなきゃ!」
友人たちが口々に騒ぎ出す様子に、獏良は少し戸惑いを感じていた。
何しろ友人に誕生日を祝ってもらうのは、久しぶりのことなのだ。
恥ずかしさと嬉しさが混ざり、どう表現したらいいのか分からなかった。
しかし、とても喜ばしいことには違いない。
「あ、ありがとう」
だから、顔を赤くしてお礼の言葉を口にした。
「まだ早ぇだろッ!」
城之内にぱちんと背中を叩かれる。
「いたいよ、城之内くん」
背中をさすりながら獏良は微笑んだ。
胸の奥がくすぐったい。
今年は例年とは違い、楽しい誕生日になりそうだ。


学校が終わるまでに決まったのは、明日は放課後に集まって食事に行ったり、買い物に行ったりするということだ。
そして、最後にはみんなでゲームをする。
いつもと代わり映えのしない計画かもしれないが、特別なもののように思えた。
足取りも軽く、獏良は一人で下校した。
気分がいいので、今日の夕飯は奮発してしまおうかという気になるほどだ。
いつも通りスーパーで買い物を済ませて帰宅をする。
「ただいまー」
その声が明るいことに自分で笑ってしまう。
ごそごそと買ったものを整理していると視線を感じた。
顔を上げなくても分かる。
この家は獏良以外住んでいないのだ。
とすると、視線の主は一人しかいない。
獏良はごくりと唾を飲み込んだ。
良いことのあった後は、悪いことが起こるのかもしれない。
このまま気づかないふりをして……。
「随分とご機嫌そうだなァ」
願いも虚しく、向こうから声をかけられた。
恐る恐る顔を上げると、バクラが目の前に姿を現していた。
「別に機嫌良くないよ……」
消え入るような声でなんとか言い返すも、バクラはそれを歯牙にもかけない。
「誕生日なんだってなァ」
「……それがどうかした?」
嫌な予感しかしなかった。
バクラが楽しそうに笑っているからだ。
こういう時は絶対にろくなことにはならない。
笑いながらバクラが言った。
「明日、学校行くのやめろよ」
その言葉に獏良の時間が止まった。
ゆっくりと頭の中で言葉を繰り返し、やっと意味が分かった。
「な……なんで、そんな勝手なこと!」
こぶしを握り締め、バクラに迫る。
そんな獏良の反論などどこ吹く風で、
「あんまり、お友だちと仲良くされても困るんでね」
バクラはそれが当然のことのように言った。
こんなことは久々だった。
以前は、獏良が気づかない内に、バクラが周りの人々を排除していったこともあった。
しかし、童実野高校に落ち着いてからは、そんな素振りを見せていなかった。
冷静さを欠いた獏良は、上手く言葉が出せなかった。
バクラがその気になれば、すぐに屈服させられてしまうのだ。
何を言っても、結局は意味がなくなってしまう。
「……僕はただ皆に祝って欲しかっただけなのに」
やっとそれだけを言うことが出来た。
ふうと、バクラが息を吐いた。

学校に行かせる

学校に行かせない

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